声優名
相葉りんご
[
声優詳細情報
]
価格
1447円
文字数
4098文字
サイズ
15763.3 KB
公開日
2022年3月23日
声のタイプ
仕事ができる会社の先輩
ファイル形式
mp3
売れ行き
この作品の販売回数 :
0回
作品内容
とあるレーサーが切腹して自決するという物語。
台詞
ある女性レーサーの自決 中山久美子
真っ黒な皮服に身を固めた混血の彼女は魅力的な女性レーサーでしたか、思い掛けずも国際スパイで、その腹中にある放射元素のカプセルを取り出すため切腹するという……
ねらいつけた短刀
そして、出て来た時の彼女を見た私は、本当にびっくりするほど……まるで輝くような美しさに、驚いてしまったのです。ほとんど化粧らしいものはしていませんでしたが、細いくっきりと描かれた眉と、軽く入れたアイ・シャドーが彼女の美しさを引き立てていたのです。長い黒髪にはヘヤ・バンドがかけられ、背に下ろしていました。
私のところはちょうど彼女の左斜め後ろに当たり、直接は見えないけれど、ちょうど正面の大きな鏡に彼女の姿が余すところなく写されるようになっていたのです。その時の彼女は、バンドをはずした例の真っ黒い皮のレーサー服、くろいブーツといった姿で、膝をついた姿勢で白布の中央に座をしめたのです。
私の胸は早鐘のようでした。
ピッタリと肌についたレーサー服は、すばらしい彼女の線を露わにしていました。わたしは、直接はその広い肩とスリムな背の線しか見えないのですが、正面の鏡に写っている彼女のあまりの美しさは、不吉なものだったのです。
喉元に手をやった彼女は、ジャンパーをさぐると、もどかしげにジーっと鞍部のところまで一気に押し下げ、肩をすぼめるようにして、からだにまつわる皮服を掻き退け、引き毟ると、ギューッと皮を軋ませながら、まず左手を、次に右手を、抜きとって上の下まで押し下げたのです。広い腰からヒップの線まで、はちきれそうになるまで皮服をギシギシときしませて押し下げました。
私は、川野リエの姿をこんなにしげしげと見たのは初めてだったのです。
浅黒い肌が白布に映えて、いっそう凛々しく、健康な美しさを感じさせました。鏡の中のリエの全面と、直接見えている彼女の背とが完全な美しさを描き出してくれました。
大きならんらんと光る瞳は、今までになく妖艶で、しかも凄絶な美貌をいっそうこの世のものでない美しさにまで高めていました。赤いふくよかな唇、長い項、いかついくらいに張った肩。
形よく半球型のピンを張った胸に、日本人ばなれのした、濃く、まるで赤く見える、色付いた乳首がつき立ち、絞られるように細くくびれたウエスト、厚く、しかも広く張った腰の肉付きが私のような日本人的な体つきと、全く異なった感じでした。
ふくよかでこんもりとせり出していながら、けっしてむだのないおなか、小さいけれど、深く深くくびれたお臍。
ちょうどその下6センチのところに一文字に走っているのは、さっき見た傷口の生々しい黄色さが目に飛び込んできました。これから開始される凄絶な結末を予測させるため、あまりにも美しく、神神しいほどの姿に、わたしは、体がしびれてしまったようでした。
膝で立った姿勢のませ、もう一度の回りに纏わるレーサー服をギュッ、ぎゅっとしっかり押し下げました。この荒々しいぐさのため、鞍部のところに鮮烈な黒さを見せる彼女の茂み、その三角形のデルタにはっきり姿を見せてしまったのです。わたしの胸は早鐘のようです。
夢中で「ヤメテ、ヤメテ」叫んでいましたが、声にならないのです。
ゆっくり短刀を取り上げた彼女は、鏡の中のわたしを見返ると、
「では、行くわ、見て!」
右手の短刀を大きくお腹から離して、狙いを付けると、「こうして!」と一声、ブスッツ、「ウツッ」
「アッ」と口の中で叫んだわたし。ぐっと前かがみに流れるリエのからだ。6センチぐらいもお腹に突っ込まれた短刀は、刃の輝きが見えません。
「これから右へ……こうして……ウツッ、ウツオオオ……オウッ」
黄色い傷口が、にわかに蘇ったようにもくもくと血を吐きます。忽ち、内ももから鞍部へ。
私は必死にもがいていましたが、包帯で縛られた手足が弛む気配は全くありません。
そのあいだじゅう、私は、彼女から目をはなすことはできませんでした。
「ウッツ、セ、セップク、ウッ、ウッ……ツツ……ウッ」
仰向いた彫りの深い美貌の眉間に深い皺がたてに刻まれ、伸び上がるようにして刃右へ捩れるからだを左へ引き戻そうとウエストがもだえます。
「ま……ウッ……ツ、オ、オ、オ……ウッ」
はらわたをさぐる 肠中寻觅
「ウッ、ウーッ、ツツ……オオ」
突然、鏡の中で異変を見たのです。傷口に、生生しい肉色の、風船のようなものがぷくっとはみ出て来たのです。こぶしほどのそのふくらみは、次第に血のりとからんで大きく膨らんでいくのです。
「ま、まだッ!え、いッ、ウッ、右へッ!」
激しいリエの叫び、皮服の鞍部からの赤黒い太い滴りが白布ブーツの間に次第に広がっていきます。
「え、えいッ!まだッ、まだッ!ウーッ、オオ、まだッ」
ぎりぎりと右脇へ、少し前かがみになったリエは、唇を噛んで、最後の一かきに挑みます。
「ウッ、ウーッ、ア、ア……アア……ウッ……ツ」
ぐっと右下腹まで引きつけた短刀を合い図のように、ぐっと深く突き入れます。
「ウーッ、ああ、セ、セップク……切腹……ああ、一文字に……見て、見て、こうして、うれしい……うれしい!」
伸び上がりざまに短刀を、おなかから抜き取ったリエ。さっきまで黄色い傷口は、今や血を吹く赤黒い裂け目になって下腹いっぱいに広がっています。
「ああ……とうとう……ああ」
背筋が大きく揺らぐと、まるでそれが合図のように、風船のようなふくらみがむくむくと傷口からのけぞったと見る間に、いっぱいに広がり、ずるずると管状の姿で、黒いレーサー服の太ももの半ばまで吊り下がったのです。
「アッ!」
思わずそれを反射的にぎりしめるリエ。しかし、気丈にも、大きく喘ぎながら、右手で黒い箱につながったマイクのようなものを取り上げました。わたしのようなまったくの素人が見ても、それが放射線を測るカウンターらしいと気づいたのです。カチカチというメカニックな、いかにも場ちがいな音がカン高く響き、リエの荒い息づかいと絡み合います。
傷口からずっとおなかを探っていくリエの右手の黒いものが、ついた右下腹の一点で止まりました。
まるで、何かが鳴いているようなけたたましい響きは、まだカプセルが彼女な体内にあることを示していたのです。
ぎゅっと彼女の小麦色の肌が苦痛に引き締まります。右手はカウンターをはなして、しっかりと乳房を伏せ込み、歯を食いしばって覚悟をきめると、
「ウッ、ウェーッ!」
左手が、ああ、なんということでしょう、手首までおなかの中へ突っ込まれたのです。
「ウッ、アッ、アウッ、アーッ」
ぎしぎし、ブーツがきしみます。血みどろの左手が、何やら、くねくねのかたまりをずるずると腹中から引き出します。
「ウッ、クッ……クルシイ……ああ、なんのッ!」
さすがに、膝て立つだけの気力を失ってか、ギューと皮服を引きつらせて、腰をおとして正座したリエ。もだえながら、はらわたをずるずると引き出します。
わたしは、半ば失神したようになって、この赤と黄とピンクと青と黒とごちゃごちゃと入り混じったものを見つめていました。ひどく生々しく濡れて、テラテラと光っていたのを、はっきり覚えています。
“呜、苦……好痛苦……啊啊!”
「アアア……」
必死に右手でカウンターを取り上げたリエは、この蠢くはらわたの山に、震えるで近づけます。
「あ、あった……ここ……ここ、よ」
荒い息混じりに間こえた声に、ほっとした響きがありました。カチカチと、歌うようになるはらわたを左手でぐっと握り締め、右手で短刀を取り上げたのです。
。
「エッ、エイッ、ウーッ、ウムッ」
ぎゅっと短刀を押し当てるものの、弾力のあるはらわたがそう簡単にきれるものではないのです。
「ウッ、ウッ、な、なんのッ!」
二度、三度、このゴムのような弾力に挑んだリエは、断ち切りかねて苦痛のうめき声をあげてもだえるだけなのです。それで、彼女は歯を食いしばって覚悟をきめると「エイッ!」
一声、短刀をぐっと引き抜きます。たまぎるような苦痛の絶叫。ブッツリと絶ち切れたはらわたから、バット血潮が飛びます。
断ち切られたはらわたの半ばが、生き物のように血と粘液を吐きながら白布上をのたうちます。
「ウーッ、ウーッ」必死にしごくようにしてごくようにして傷口から取り出した小さな物体。
「と、とうとう、や……やった。こ、このとおりよ。……ここのカプセルを、お……あ、セップク……セップク……ああ、気力が、クッ、クッシ……苦しいっ……ああ、もう少しッ!」
歯を食いしばったりが、傍らの透明な液の瓶とを引き寄せ、その中へ、その小さな物体を落とし込みます。シューッと細かいあわを吹いて、みるみる崩れていくカプセル。
「ああ……と、とうとう……や、やった、ああ、お、お、思い残すこ……とない……ああ……」
いくら気丈でも、気力の限度で戦っていた彼女は、カプセルを処理できたことで気が緩んだのでしょう、無意識に太ももを擦り合わせて、もだえ、がっくりと俯いて、手をついてしまったのです。
ところが、一度俯いたリエは、必死にからだを起こすと、鏡の中の私の視線をさぐり、目が合うと、苦痛に引きつり、脂汗だらけの顔をかすかに微笑がかすめたように思いました。
「ウッ、ウーツ……」
最後の気力を振るったりリエが、右手で血みどろの短刀を拾い上げると、はらわたがはみ出してバックリと口を開けている傷口をさらけ出すように伸び上がりざま「ウエッ!」
と、下腹に、体を二つに折るようにして叩きつけたのです。
「キューッ」と叫びざま、どっと横倒しに。でも、さすがに気力の限度だった最後の刃は、じゅうぶんに突き刺すに至らないのです。
「ウッ、ウーツ、ウツ」
ドスッとブーツが空をけり、最後の気力で刺した刃をやっと支えているに過ぎません。その苦しみはとうてい正視できないほどでした。ああ、わたしがもし自由なら、彼女の苦痛を救うことができるのに。空をけり血の海でもがき悶えるリエを、ただ黙って見ているだけです。でも、私の苦痛は失神によって救われましたのです。
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